2007-05-09

王様の耳はロバの耳

OK、衝撃から 36 時間以上が経って、すこし落ち着いてきた。日記に苦い想い出を書くのは辛いけど、でもそんなことも書き留めておくのが日記だと思う。

Ivan Basso が Operacion Puerto への関与を告白した。

落胆と憤り。

勇気ある告白だろうか。なぜもっとはやくできなかったのか。なぜディスカバリーと契約したのか。黙っていれば隠し通せると思ったのか。OP はこのままフェードアウトして、もう明るみに出ることはないとでも思ったのだろうか。「準備はしたが、実際には使用していない」と云う発言も、このタイミングでの告白も量刑の減軽を交渉しているようでいやらしく見えてしまうのは、穿った見方だろうか。

去年の CYCLE MODE でのサイン会、淡々とサインをする Basso の横で笑顔でキリキリと動き回っていた今中さんの姿。トークライヴでは本業ではないながらも通訳をこなした砂田さんの姿。会場からの「ダブルツールを達成したら、ジャパンカップにきて走ってもらえますか?」の問いに「約束します」と幕張の会場に響いた応えとその興奮も、いまは虚しい。

メジャーメディアはレースの結果すら報道しないけど、ドーピングをはじめネガティヴなニューズは嬉々として報道する。

2005 年にツールを観戦しに行ったときに世話になったパリ在住の叔母とのエピソード。叔母はロードレースには関心がなく、むしろツールの最終日にパリの大通りが封鎖されることに不便を感じるようなひと。そんな叔母でもオレがわざわざ日本から訪れて、夜な夜なその魅力を語るうちに、興味をもってくれたよう。人生の半分以上をあちらで暮らしている彼女はフランス人選手が気になる模様。「フランス人でいちばん速い選手は誰?」「残念だけど、もうここ何年もフランス人は勝っていないんだよ」残念そうな顔をしていた。その後叔母が帰国することがあって、オレの実家によったときに家族とのツールの話の中で、叔母は「ツールの最終日、パリはお祭り騒ぎになる」と話し、「でもねえ」と続けて注射を自分に打つジェスチャー。「ドーピングが酷いのよ」興味のないひとに印象づけていることを強烈に知らしめた。

Operacion Puerto は、Cofidis Affair も Festina Affair も知らず、ロードレース観戦歴の浅いオレにとってはほぼ初めての衝撃 (Pantani の自殺、Tyler Hamilton や Robert Heras 陽性反応なんてこともおこったけど、この時期はツール以外のレースはちゃんと観てなかった)。

春のクラシックなんかの写真を観ていると、沿道には年配のファンもいて、声援をおくっている。おそらく彼らもなんどかこういった衝撃をうけてきたと思う。それでも応援し続けている。彼らがどうやってこれらの衝撃を乗り越えてきたのかをきいてみたい。

誰かにそそのかされたのかもしれないけど、もうこどもじゃないんだし、自分のしてしまったことには責任をとってもらいたい。彼が制裁措置のあとに復帰を考えているとしたら、知っていることすべてを告白できるだろうか? 家族のためにも、1 年か 2 年かわからないけど制裁を受けたあともアンチドーピングと自転車競技ぜんたいの信頼回復のために尽力してほしい。いまの David Millar がそうしているように。

なによりも悲しいのは、ロードレースのファン・コミュニティがレースの話題ではなく、このネガティヴな話題で溢れかえってしまうこと。この件に関して書くのはひとまずこれでおしまいにしたいと思う。できることなら未来永劫書かずにすませたい。

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